正解のない事業に踏み込み、構造を創り続ける
エンジニアによる意思決定の現場
エムスリーテクノロジーズは、グループ会社のプロダクト・技術・組織を横断し、事業成長に必要な判断と設計を担うエンジニアリング組織です。単なる開発支援にとどまらず、課題が言語化されていない段階から関わり、構造を整理しながら事業そのものを前に進めていきます。今回は、同社の立ち上げから関わる山崎に、これまでのキャリアや仕事の実態、そしてこの環境で向き合っている役割について聞きました。
物心がついた頃には、すでにコードを書いていた
これまでのキャリアについて教えてください。
現在は、他の役割と並行して、エムスリーテクノロジーズの代表取締役を務めており、エムスリーグループに属している多数のグループ会社の事業成長を、エンジニアリングの力で支援しています。プロダクト開発や技術基盤の刷新、組織づくりまでを横断し、現場に入り込みながら意思決定から実行までを担っています。
キャリアのスタートはエンジニアです。幼少期からコードに触れ、インターネットの黎明期から技術に関わってきました。大学在学中にはインターネットベンチャーで実務を経験し、Eコマースの立ち上げにも携わっています。
その後、メビックスがエムスリーグループに参画したのをきっかけに、新規プロダクトの立ち上げや技術基盤の刷新、組織づくりに一貫して関わってきました。
現在はその延長線上で、複数のグループ会社を横断しながら、プロダクト・技術・組織の観点からそれらの会社の事業成長に向き合っています。
エムスリーテクノロジーズが生まれた背景を教えてください。
起点は2009年、メビックスがエムスリーにグループインしたタイミングに遡ります。そこから、エムスリー所属のエンジニアと一緒にグループ会社のエンジニアリングをより良くしていく取り組みが始まりました。
その後、2012年には電子カルテ事業の立ち上げとグループ会社の改善に関わり、技術だけでなくプロダクトや組織も含めて全体に手を入れたことで、事業が大きく改善しました。営業利益が数十倍に伸びたケースもあります。
こうした取り組みを積み重ねる中で、「エンジニアリングによって事業を大きく改善できる」という手応えが、次第に確信へと変わっていきました。
エムスリーテクノロジーズは、その15年以上続けてきた実践を、明確なミッションとして展開するために設立された会社です。ゼロから立ち上げるのではなく、すでに成果が出ているモデルを、より多くの会社に適用していくフェーズに入ったと考えています。
“プロダクト・技術・組織” 三位一体で変えていく
現在の具体的な業務内容について教えてください。
大きく分けると、プロダクト・技術・組織の3つの領域に関わっています。ただ、実際にはそれぞれを分けているというよりも、常に横断して見ている感覚に近いです。
まずプロダクト開発では、既存プロダクトの改善や新規プロダクトの立ち上げに関わります。単に機能を作るというよりも、どの市場に対してどんな価値を届けるのか、その前提から一緒に設計していきます。いわばCPO、VPoP的な役割です。
技術領域では、技術選定やアーキテクチャ設計、テストの自動化、CI/CDの導入、インフラの刷新などを行います。古い技術や非効率な開発環境が残っているケースも多いので、そこを起点に全体の構造を見直していくこともあります。こちらはCTO的な役割と言えます。
組織については、採用や評価制度、開発プロセス、チーム構成などを設計します。いわゆるVPoE的な役割ですね。単に制度を整えるのではなく、事業として成果が出る状態をどう作るかまで踏み込みます。
実際のプロジェクトでは、組織の課題から入り、それが技術やプロダクトにどうつながっているのかを整理し、最終的にビジネス成果へとつなげていきます。技術だけを改善しても成果には直結しないため、常にプロダクト・技術・組織を一体として捉えています。
この仕事の難しさについて教えてください。
裁量が大きいと言われますが、実際にはそれ以上に「意思決定そのもの」を担う場面が多い点に難しさがあります。
どの技術を採用するか、どの順番で改善していくか、組織をどう変えるか。そうした一つひとつの判断が、そのまま事業の結果に直結します。
判断を誤れば成長を止めてしまう可能性もありますし、適切に設計できれば大きく前に進めることもできる。責任の重さは常に伴います。
一方で、すべてを自由に決められるわけでも、自由に決めるべきでもありません。現場との合意形成が重要であり、そのプロセス自体も設計していく必要があります。
合意が取れれば大きな意思決定が出来ますが、その前段にある関係構築やプロセス設計も、この仕事の重要な一部です。
そのため、技術力や経験に加えて、「この人の判断なら任せられる」と思ってもらえる信頼が不可欠になります。
さらに、この仕事には「呼ばれて入る」という特徴があります。すでに課題解決への期待値がある状態で関わるため、ゼロから関係性を築く難しさは比較的少ない一方で、最初から成果を求められる緊張感は大きいと感じます。
エンジニアのポテンシャルが解放される瞬間
この仕事の面白さはどこにありますか?
一番は、現場のエンジニアが一気に力を発揮する瞬間に立ち会えることです。
多くの現場には、「本当はこうしたい」というアイデアや改善案を持っている人がすでにいます。たとえば、テスト導入やCI/CDの整備、クラウド化の推進などです。ただ、それらは個人のスキルや意欲ではなく、組織構造や意思決定の仕組みによって進んでいないことが少なくありません。
そこに入り、技術だけでなくプロセスや意思決定の流れ、役割分担まで整理していくと、あるタイミングで一気に動き出します。止まっていたものが流れ始め、それまで出ていなかったアウトプットが連鎖的に生まれていく。その変化を見るのが、この仕事の面白さです。
成果は結果としてついてきますが、その多くはすでに現場にいたメンバーの力によるものです。自分たちは何か特別なことをしているというより、その力が自然に発揮される構造を設計している。そんな感覚に近いですね。
どのような方がフィットすると思いますか。
志向としては大きく3つあると思っています。卓越したプロダクトを生み出したい人、技術で大きな成果を出したい人、強い技術組織を作りたい人。このいずれかに強い関心があれば活躍できる可能性は高いです。
一方で、より本質的に重要なのは利他の精神だと考えています。この仕事は自分のアウトプットで成果を出すというよりも、他者や組織の力を引き出し、全体としての成果を最大化することが求められます。
そのため、自分が前に出ることよりも、周囲の成果に価値を見出せる人の方がフィットします。誰かの成功を自分の価値として捉えられるかどうかが、この環境で成果を出せるかの分かれ目になると感じています。
CTO・VPoEを100人輩出するという構想
今後の展望について教えてください。
CTOやVPoEを100人規模で輩出したいと考えています。
エムスリーグループには150社以上の事業があり、それぞれに適切な技術リーダーが必要です。その役割を担える人材を増やすことが、事業全体の成長に直結すると考えています。
医療という領域は課題が大きい分、技術によって生み出せる価値も大きい領域です。だからこそ、本質的な課題に向き合い、事業として変化を生み出せる人材を増やしていくことに意味があります。自分たちは、その起点となる存在でありたいと考えています。
最後にメッセージをお願いします。
エムスリーテクノロジーズは、技術志向の強い会社です。ただ、その技術を社会にどう使うかまで含めて考え続けています。
医療領域には、いまだに構造的に解決されていない課題が多く残っています。だからこそ、グループ会社の仲間をリスペクトしつつ、プロダクト・技術・組織のすべてを強化し、事業として改善していく余地があります。
その変化を、自分の意思決定で生み出していきたい方と、一緒に取り組めたら嬉しいです。