藤原 聖

モバイルから医療を変える

専門性を起点に、構造そのものを変えていく仕事

藤原 聖 取締役 / VPoE
VPoE Engineer

エムスリーテクノロジーズは、グループ会社のプロダクト・技術・組織を横断し、事業成長に必要な判断と設計を担うエンジニアリング組織です。単なる開発支援にとどまらず、課題が言語化されていない段階から関わり、構造を整理しながら事業そのものを前に進めていきます。今回は、モバイル領域を軸にグループ全体の変革に関わる藤原に、これまでのキャリアや現在の取り組み、現場での意思決定のリアルについて聞きました。

モバイルの黎明期から、専門性を磨き続けてきた

これまでのキャリアについて教えてください。

最初に入った会社では受託開発を行い、複数の企業の開発に関わっていました。ちょうどその頃、日本でiPhoneが発売され始めたタイミングでiOSアプリの開発案件に関わり、それがモバイル開発のスタートになりました。その後Android開発にも携わり、モバイル領域を中心に経験を積んできました。

2011年にサイバーエージェントへ入社し、Amebaや動画系の新規事業など複数のプロダクト開発に関わりました。2018年にLINEへ転職してからは、Developer Relationsや採用人事のマネジメントも担当し、開発にとどまらず組織や採用といった領域にも関わるようになりました。

また、LINEに入るタイミングと並行して、エムスリーでは技術顧問として関わり始めました。

入社を決めた背景と、実際に入社して感じた変化について教えてください。

技術顧問として6年以上関わっていましたが、副業という形では関われる時間に限界があり、構造を変えていくような取り組みは前に進めるのが難しいと感じる場面が増えていきました。その中で感じていたのは、エムスリーテクノロジーズとして支援に入るエンジニアは優秀な方が多い一方で、モバイルに強い専門性を持つ人はそこまで多くないという点です。フルスタックに対応できるエンジニアは多いものの、モバイルを起点に価値を出していくという観点ではまだ余地があると感じました。

さらに、医療業界全体を見ても、モバイルは補助的な位置づけとして扱われているケースが多く、本来ユーザー体験に直結する領域でありながらその価値が十分に活かされていないと感じていました。そうした状況を踏まえ、自分の専門性がそのまま価値として発揮できる領域があると考えたことが、エムスリーテクノロジーズを選んだ理由です。

実際に入社してみると、これまで見えていなかった側面も見えてきました。様々な会社と関わり、山崎や岩佐など事業責任者としての経験も豊富なメンバーと議論する中で、170社を超えるグループ全体のビジネス戦略が見えてくるようになったのが大きな変化でした。

グループ全体の構造や各社の役割が一つのつながりとして見えるようになり、その中で自分たちがどこに関わり、どのように価値を出すべきかという判断の前提を明確にした上で支援を進められているなと感じています。

変化を進めるには、まず土台と向き合わなければいけない

現在関わっているプロジェクトについて教えてください。どのようなテーマに向き合っていますか?

現在関わっているのは、介護領域のアプリを提供している会社です。10年以上運用されてきたプロダクトで、機能の積み重ねによってコード全体の見通しが立ちにくくなっていました。どこを変更するとどこに影響が出るのかが把握しづらく、新しい機能を追加する際にも影響範囲を慎重に見極める必要があり、開発のスピードを上げにくい状態でした。

こうした状況では機能開発を優先しても成果につながりにくいため、まずは構造の整理を優先しました。大規模なリファクタリングを進め、変更しても安定して動く状態、開発者が安心して改善に取り組める基盤を整えることに取り組んでいます。この土台が整って初めて、継続的なプロダクト改善が可能になると考えています。

また、開発の進め方も変わってきており、現在はAIエージェントを前提にしています。コードの多くはAIが生成し、自分は構造設計や指示、レビューに時間を使う形へと変わってきています。さらにそのやり方をチームに展開し、自分たちがいなくても改善が回り続ける状態をつくることまで含めて取り組んでいます。

こうした取り組みの中で、難しさを感じるのはどのような点ですか?

一番難しいと感じるのは、リファクタリングの価値を共有していくことです。こうした取り組みは短期的には効果が見えにくく、今動いているものがある中で、なぜ変える必要があるのかが伝わりづらい場面がどうしても出てきます。

また、進める過程で一時的に不具合が出ることもあるため、その変化に対して慎重な反応が返ってくることもあります。結果として、取り組みの評価が短期的な視点で判断されやすい難しさがあります。一方で、構造的な課題は日常的には見えにくいものの、長期的には開発のスピードや品質に影響していくものだと考えています。そのため、その必要性や優先度をどう伝え、納得感を持って進めていくかが重要になります。

また、組織としても現状で大きな課題が見えていない場合は、変化の優先度が上がりにくいことがあります。特に中長期の取り組みは短期的な成果が見えにくいため、判断が難しくなりやすいです。その中で技術的な正しさだけでなく、なぜ今取り組む必要があるのかを含めて説明し、合意形成していくこともこの仕事の難しさだと感じています。

構造が変わると、組織の力が一気に出始める

この仕事の面白さはどこにあると感じていますか?

難しさはありますが、それでもやる価値があると感じるのは、構造が整ったタイミングで変化が一気に現れるからです。例えば、それまで開発に時間がかかっていたチームが、同じメンバーのままでスピードを上げられるようになったり、アウトプットが継続的に出るようになることがあります。

これは個々のスキルが急に変わったというよりも、構造が変わったことで本来の力が発揮されるようになった状態に近いと感じています。

また、エンジニア自身がやりたかった改善に着手できるようになる場面もあります。これまで後回しになっていた取り組みが前に進み始めることで、開発の手応えも変わっていきます。

こうした変化は個人ではなく、チームや組織全体に広がっていきます。そのため、一つの改善が全体の生産性に影響していくような感覚があります。自分が何かを作るというよりも、そうした変化が実際のアウトプットとして現れてくるところに、この仕事の面白さを感じています。

現場ではどのような判断を任されることが多いですか?

基本的には少人数で現場に入ることが多いため、技術的な判断については自分に委ねられる場面が多いです。自社開発であれば同じ専門分野のエンジニアと議論しながら進めることができますが、支援という形で入る場合は、その場で一番専門領域を理解している人が自分になることが多くなります。

そのため、どの技術を選ぶか、どの順番で進めるかといった判断を自分が引き受ける必要があります。単に決めるだけではなく、その判断が前提となって開発が進んでいく形になります。

また、その結果は比較的早い段階で現場に影響として現れます。もし判断が適切でなかった場合は、開発の進め方に影響が出たり、関係性にも影響が出たりする可能性があります。

そういう意味では、裁量があるというよりも、判断を引き受ける責任があるという感覚に近いです。自由に決められるというよりも、その分、判断の精度に対して責任を持つ必要がある環境だと感じています。

まずは組織を広げ、より多くの会社に価値を届けたい

今後、エムスリーテクノロジーズでどのようなことに挑戦していきたいですか?

まずは組織をしっかり拡大していきたいと考えています。現状のエムスリーテクノロジーズは、関われている会社の数がまだ限られており、グループ全体に対して十分に価値を届けきれているとは言えない状況です。

まずは組織としての厚みをつくり、より多くの会社と関われる状態にしていきたいと思っています。個別の課題に対応するだけでなく、継続的に支援できる体制を整えることが重要だと考えています。

その上で、グループ内でのシナジーもより生み出していきたいですね。同じ医療領域の中でも、近い事業や連携できる余地のある会社は多くあります。そうした会社同士をつなぎながら、個社ごとの改善にとどまらず、グループ全体として価値を高めていくことに貢献していきたいと考えています。

最後にメッセージをお願いします。

この環境はこれまでの経験全てがそのまま活きる場所だと思っています。エンジニアリングの経験だけでなく、採用や技術広報、マネジメントなど、一見バラバラに見える経験もそれぞれがつながって活きてくる場面があります。

例えば、組織の状況を理解したりチームとの関係性をつくったりする場面では、開発以外の経験が役に立つことも多いです。自分のキャリアに一貫性がないと感じている方でも、それが別の形で強みになる可能性があります。

また、AIの活用が前提になってきていることもあり、しばらくコードから離れていた方でも、開発に戻りやすい環境になっていると感じています。技術だけでなく、組織や事業にも関わりながら価値を出していきたいと考えている方には、合っている環境だと思います。

自分のこれまでの経験を糧に成長していきたい方にとっては、大きなチャンスがある環境だと思います。そうした志向を持つ方に、ぜひ挑戦してほしいと考えています。

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