エンジニアから経営へ
構造を変え、事業を前に進める意思決定を担う
エムスリーテクノロジーズは、グループ会社のプロダクト・技術・組織を横断し、事業成長に必要な判断と設計を担うエンジニアリング組織です。単なる開発支援にとどまらず、課題が言語化されていない段階から関わり、構造を整理しながら事業そのものを前に進めていきます。今回は、エンジニアとしてキャリアをスタートしながら、現在は複数のグループ会社で事業・技術・組織の意思決定を担う岩佐に、これまでのキャリアの変遷と、この環境で求められる役割について聞きました。
「知らない間に決まる」から、意思決定の側へ
これまでのキャリアについて教えてください。
前職はBIGLOBEで、iOSやAndroidのエンジニアとして働いていました。Objective-CやJavaで開発していた時期です。当時は会社として大きな変化が続いており、NECグループから売却され、その後KDDIグループに移るという流れがありました。
その中で、「知らない間にいろいろなことが決まっている」と感じる場面がありました。すべての情報を共有できるわけではないと理解しつつも、自分の所属や働き方に関わる意思決定に関与できない状態には違和感がありました。
このまま流れに乗るのではなく、自分で選びにいくべきではないか。そう考え、転職活動を始めました。その中でエムスリーを選んだ理由は、組織のサイズと意思決定との距離感です。当時は50人規模で、会社の中で何が起きているかが見えやすく、意思決定のスピードも速い。全体が見える環境で、自分も意思決定に近い立場で関わりたいと考え、この環境を選びました。
現在の立場に至る中で、どんな変化がありましたか。
振り返ると、一番大きいのは立場の変化だと思います。もともとはソフトウェアエンジニアとして入社しているため、最初からグループ会社の取締役として関わるようになるとは考えていませんでした。
ただ、グループ会社の支援に入るようになってから、求められる役割は大きく変わっていきました。それまでは自分の担当領域の中で技術や開発をどう進めるかを考えていましたが、支援の現場ではそれだけでは成り立ちません。
採用をどうするのか、現在の体制で継続できるのか、どこにリソースを寄せるべきなのかといった判断を、事業全体を見ながら行う必要が出てきました。
ITデューデリジェンスのように外から評価する経験はありましたが、中に入り意思決定を担うのとでは責任の重さが大きく違います。技術をどうするかだけでなく、「どういう状態に持っていくのか」を自分で決める立場になったことが、最も大きな変化でした。
領域を横断し、前提そのものを変える
現在の仕事について教えてください。
現在は、エムスリーキャリア、イーウェル、エムスリーデジタルコミュニケーションズの3社に継続的に関わり、それぞれで取締役やVPoEに近い立場として、日常的に意思決定に関与しています。
特定の領域を担当するというよりも、その会社の状況全体を見ながら、どこに手を入れると前に進むのかを判断していく役割です。一見すると技術的な問題に見えるものでも、背景には組織や役割分担の課題があることもありますし、逆に組織の問題だと思っていたものが技術的な制約によって生まれているケースもあります。
そのため、プロダクト・技術・組織を分けて最適化するのではなく、それぞれのつながりを整理した上で、全体として最も効果の出るポイントに優先順位をつけていきます。
また、リソースが限られている中では、「何をやるか」だけでなく「何をやらないか」を決めることも重要になります。そうした意味で、全体を見ながら最も効果の出る一手を選び続ける仕事だと感じています。
印象に残っている意思決定について教えてください。
一つはAIの導入です。当時はまだそこまで浸透しておらず、「AIのコードは信用できない」といった懸念もありました。品質や保守性の観点で不安があるのも事実でしたが、実際に使ってみると開発効率が上がることは明確でした。
さらに性能は今後も向上していく可能性が高いと考え、「使うべきかどうか」を議論し続けるよりも、「どう使うか」を前提に進めるべきだと判断しました。その結果、単なるツール導入ではなく、採用基準も含めて開発の前提そのものを見直す意思決定になりました。
もう一つは、システム削減の判断です。10人に満たない組織で100以上のシステムを維持している状態があり、構造的に負荷が高い状況でした。当初は人を増やす選択肢もありましたが、実際には一部のシステムだけが価値を生んでおり、多くは「念のため残している」状態でした。
そのため、増やすのではなく減らすべきだと判断しました。ただ、それぞれのシステムには残している理由があるため、一律に削減することは簡単ではありません。それでも方向を決めない限り変わらないと考え、削減方針を明確にしました。結果として、リソースを価値の高い領域に集中できる状態に整理することができました。
自分で決める責任が、成長と面白さになる
この仕事の難しさと面白さを教えてください。
一番大きいのは、自分で方向を定めなければならないことです。
エムスリーにも自ら意思決定して方向性を決めていくカルチャーがあるのですが、グループ会社ではそもそも前提となる方針や体制が整っていない状態から入ることも多く、より難しい意思決定をする場面があります。どこにリソースを割くのか、何を優先するのかといったところを決め、その責任を追っていく必要があります。
その判断はそのまま現場の動きや事業の進み方に影響するため、責任は大きいですし、誰かが方向を示してくれるわけではないという難しさがあります。
ただ一方で、それは面白さでもあります。グループ会社では自分がほぼトップに近い立場で関わるため、「どう変えていくか」という方針を自分の判断で決めることができます。ついていくのではなく、自分で決めて前に進める。その責任と自由の両方がある点に、この仕事の面白さがあると感じています。
成長の実感はありますか?
あります。特に大きいのは、組織を立ち上げるところから関われる点だと思います。
エムスリー本体では整った開発環境や組織の中で仕事をすることが多いですが、グループ会社では前提が整っていない状態から関わるケースも少なくありません。エンジニアが不足していたり、開発の進め方が定まっていなかったりする中で、単に開発を進めるだけでは成立せず、採用や体制づくり、優先順位の設計といったところから考える必要があります。
ただ、すべてを一度に整えられるわけではないため、限られたリソースの中で優先順位をつけながら進めていくことになります。その判断によって立ち上がり方も変わるため、どこに手を入れるかを見極めること自体が重要になります。
こうしたプロセスを含めて経験できることで、技術力の向上にとどまらず、組織や事業全体をどう捉えるかという視点が大きく変わりました。この変化が、自分にとって最も大きな成長だと感じています。
個人に委ねるだけでは終わらない
エムスリーテクノロジーズならではの特徴はありますか?
一番大きいのは、個人の裁量に任せきりにしない仕組みがある点だと思います。
グループ会社に関わる以上、一定の裁量を持って意思決定をしていく必要がありますが、完全に個人に委ねられて孤立するような環境ではありません。同じようにグループ会社支援をしているメンバーがいるため、判断に迷ったときには相談できますし、過去の事例をもとに意思決定の方向性を考えることもできます。
また、状況に応じてエムスリー本体から人をアサインすることもできるため、リソースが完全に固定されているわけではありません。
もちろん制約はありますが、「一人でなんとかするしかない」という状態ではないというのは、意思決定を進める上で大きな違いだと感じています。裁量を持ちながらも、それを支える構造がある。このバランスがこの環境の特徴だと思います。
最後にメッセージをお願いします。
エンジニアとして開発に関わるだけでなく、将来的にCTOやVPoEのような立場で事業に関わりたいと考えている方には、非常に合っている環境だと思います。
ここでは、技術だけでなく、組織やプロダクトの意思決定にも実際に関わることになります。それを机上で考えるのではなく、グループ会社という実際の事業の中で、試行錯誤しながら経験できる点は、この環境ならではの特徴です。
もちろん簡単な仕事ではありませんが、自分で判断し、その結果に責任を持つ経験を積みたい方にとっては、大きな価値があると思います。技術にとどまらず、事業そのものに関わっていきたいと考えている方に、ぜひ挑戦してほしいです。